研究概要 |
細胞の癌化に伴ない、染色体異常及びDNA増幅がおこるが、その機構に関しては不明な点が多く、発癌機構解明のためにもその研究推進が必要である。しかし細胞内におけるゲノムの変化を解析するのは容易ではなく、モデル系を用いた研究が考えられる。 単純ヘルペスウイルス(HSV)は、LとSの2部分に分れる160kbのゲノムを有し、LとSの各々の両端には倒置反復配列が存在し、LとSの各々は独立して2つの方向性をとり得る(L-S逆位)といった特性がある。本研究では、ゲノムの特異な挙動を示すHSVをモデルとして用い、ゲノムの逆位の機構解析を進めた。 HSVの逆位では、ゲノムの両端及びL-S結合部に存在する"a"配列がvsに作用していることを示すデーターが提出されていた。ところが、"a"配列以外の配列間での組み換えにより、逆位がおこり得るデーターが出された。当研究者も、ユニークな配列が倒置反復配列の一部へ転換をおこした特異なHSVを分離し(J.Gen.Virol.1986,67,1035-1048)、"a"配列以外の組み換えの可能性を支持した。これをより明確にするため、L領域の倒置反復配列(RL)のポリモルフィズムマーカーがヘテロであるHSVを用い、RL間の組み換えを解析した。その結果、RL間の組み換えは高頻度かつランダムで、RLの位置に影響されないことを明らかにした(J.Virol.1987,in press)。また、HSVにより細胞の癌関連遺伝子発現がどのように影響されるのか、今後の興味ある点である(Biochem.Biophys.Res.Comm.1986,135,521-526)。
|