研究概要 |
本年度は、主として、基礎技術の確立に重きを置き、以下の結果を得た。 (1)P因子(Carnegie 20)を用い、高頻度で形質転換体を得る技術を確立した。我々の最終条件下では、GIの20〜30%が、常に形質転換体を含む子孫を作ることができた。(2)熱ショック遺伝子プロモーター,rosy遺伝子(眼色の遺伝子)を持ったP因子発現ベクターを作り、それが、実際にショウジョウバエで機能するか否かについて、大腸菌のlac-Z遺伝子を挿入することにより調べた。その結果、我々の発現ベクターは、有用であることが判明した。(3)特に、極めて迅速にショウジョウバエ個体内での遺伝子発現を調べる新しい方法として、embryoを用いたtransient transformation/expression法を開発し、これをイントロンの組織特異的発現の研究に応用した。遺伝子としては、大腸菌のベータ ガラクトシダーゼ遺伝子とショウジョウバエのトランスポゾン、コピアの融合遺伝子を用い、その境目にイントロンの挿入サイトを作った。我々の条件下では、P因子の2つのイントロンが共に、embryo中でスプライスされることが分かった。(4)白眼遺伝子(野生型は赤眼)の色々な部分のanti-sense RNAが熱ショック遺伝子プロモーターの影響下で発現できる形質転換体を作製した。しかし、現在までコーディング領域のanti-sense RNAの効果は調べたが、希望する"mutant"は得られなかった。調節領域のanti-sense RNAの効果は検討中である。(5)脊椎動物の癌遺伝子srcはショウジョウバエに導入中であり、形質転換体ができ次第、熱ショックによる癌遺伝子発現の効果を調べる予定である。
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