研究概要 |
研究者らは数年来、神経芽細胞腫の分化誘導療法に関する基礎的研究を行ってきたが、坂崎らはこの細胞増殖・分化におけるニューロン、グリア相関に注目し、神経芽腫細胞に対してもグリアからの調節機序が働いていると考え実験をすすめ、ラットグリア芽細胞の培養液中に神経芽腫細胞の増殖を特異的に抑制し、形態的、生化学的分化を誘導する物質を見出し神経芽腫細胞増殖抑制因子(NGIF)と名付けた。さらに堀内らは腹水型のクローン化神経芽腫細胞とグリア芽細胞とのcoculture系で、NGIFの生物学的性質の検討を行った。このcoculture系において、グリア芽細胞が産生し神経芽腫細胞の増殖をコントロールするNGIFとは別に、神経芽腫細胞が産生しグリア芽細胞の増殖をコントロールする新しいグリア細胞増殖抑制因子(GGIF)の存在が示唆された。そこで研究者はまずNGIFの研究を発展させる目的で、従来のラットグリア芽細胞とマウス神経芽腫細胞による実験系をヒトグリアとヒト神経芽腫細胞による実験系に変更し、ヒトグリオーマの培養細胞からヒト由来のNGIF(h-NGIF)の同定を行い、その物理化学的性質を検討した。ヒトグリオーマの産生する神経芽腫増殖抑制因子(h-NGIF)は分子量5,000〜10,000Mr、等電点6.1および8.4、80℃60分にても熱安定性のタンパク性因子である。h-NGIFはヒト神経芽腫細胞(特にTGW)に対しDNA合成の抑制効果を認めたが、γ-NGIFに見られたような形態的、生化学的文化は認めなかった。h-NGIF被覆リポソーム内に分化誘導剤を封入し、神経芽腫の分化誘導実験については現在検討中である。
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