研究概要 |
従来からの研究で、【^(31)P】-NMRスペクトル(MRS)は、腫瘍の治療効果判定の鋭敏な手段となり得ることを見出した。またNMR装置の出すRFパルスを利用すれば温熱療法を行なえる事を考え、今回、NMR装置にて温熱療法を行ないつつ同時にその効果を判定するための基礎的実験を行なった。 〔方法〕腫瘍モデルとしてrat glioma(EA285)の皮下移殖モデルを用いた。 NMR装置はJEOL SCM200(4.7Τ)を用いた。腫瘍がNMR測定用表面コイルに位置するようにratを置き、この表面コイルで【^(31)P】の周波数のRFパルスを連続的に腫瘍に照射した。引続いて同じコイルで【^(31)P】-MRSを連続的に測定し、その変化を観察した。また【^1H】MRIをも撮像した。別の系で、RF照射中の腫瘍内温度をneedle thermister(Baily)にて測定した。〔結果〕治療前の腫瘍の【^(31)P】-MRSはnucleoside triphosphate(NTP)phosphomonoesters(PME),Piのピークが認められ、PCrは低かった。5wattsのRFパルスを60分間照射すると、直後からNTP,PMEピークは減少し、Piが増加し、1時間後にPiのみになった。【^1H】-MRIでは2日後に5〜6mmの深さの部分で【T_1】,【T_2】の延長を示す所見が認められた。組織学的には壊死巣を呈していた。5watts照射9尾とも同様の変化を呈した。腫瘍内温度は、RF照射4〜5分後から、5〜6mmの深さで43.6〜43.8℃になった。5watts以下の照射では【^(31)P】-MRSはコントロール群に比して有意の差を示さなかった。 〔結論〕以上から、NMR装置を用いて、RF hyperthermiaが行なえることが示され、同時に【^(31)P】-MRS変化を観察することにより、その効果を鋭敏に捉えられることが示された。NMR装置が診断のみならず、治療にも用いられる可能性がある。また本法は、温熱方法の新しい研究法として、基礎的諸問題の検討に有用となると考えられる。今後、臨床方面への応用の可能性について検討を続けてゆきたい。
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