研究概要 |
本研究は抗腫瘍性海産プロスタノイドであるクラブロンを化学修飾するこことにより新たな抗腫瘍性物質を創製することを目的として行うものである。本年度においては以下のような基礎的知見を得た。 1.抗腫瘍活性の増強に関してークラブロンの10位をハロゲン置換したものはヒト前骨髄性白血病細胞HL-60に対する増殖抑制効果(【IC_(50)】)に著しい増強が認められた。特にフッ素及び塩素置換体はクラブロンの約20倍強い活性を示した。クラブロン【IC_(50)】0.2μg/ml<ヨードブロン(含ヨウ素)0.03μg/ml<ブロモブロン(含臭素)0.025μg/ml<塩素置換体,フッ素置換体0.01μg/ml。 2.活性発現の分子レベルからの解明に関してークラブロンの10,11-ジヒドロ体(【IC_(50)】2μg/ml)は著しく活性化が低下し、交差共役系の存在が活性発現に必要であることが明らかになった。しかし、10,11-エポキシド(【IC_(50)】0.2μg/ml)はクラブロンと同等の活性を示し活性発現に何らかの関係を示唆している。クラブロンのα鎖を増炭したものもクラブロンと同等の活性であり、α鎖の延長は活性に影響を与えていない。また天然物クロロブロン(含塩素)の鏡像異性体も天然物と同等の活性を示し、12位酸素官能基の絶体配置は活性に無関係であることが判明した。 3.作用機序の解明に関してー活性の増強が認められたハロゲン置換体の作用機序について、HL-60細胞をハロゲン置換体で処理後、細胞動態をフローサイトメーターで解析した結果、ハロゲン置換体もクラブロンと同じく細胞周期の【G_1】-ブロッカーであることが明らかとなった。 以上、活性の増強などに関して満足すべき結果が得られたが、生体内安定性に関して問題を残した。これまでに得た類縁化合物のほとんどはin vivoで活性の低下を示しており、この点につき今後の検討が必要である。
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