研究概要 |
融雪地すべりの直接的な成因である山地における表面融雪量や融雪水浸透の定量的解析はほとんど行なわれていない。そこで北海道の実験流域(面積11.2【Km^2】)において、1)地形効果を考虜した熱収支法による融雪量予測、さらに2)融雪水浸透速度と表面融雪強度の関係、及び3)河川水の化学成分変化より流出成分の分離、を研究の重点項目とした。 1).流域内熱収支法による山地の融雪量予測 流域内を面積135m×135mの格子点に分け、各地点において地形効果を考虜した熱収支成分を求めた。融雪に寄与する最も重要な因子は放射熱であり、ついで大気からの伝達熱(顕熱)であった。融雪熱量に占めるそれぞれの割合は標高300mの低地部では放射70〜80%、顕熱20〜30%、流域山頂部では放射50〜60%、顕熱50〜40%と高度依存性を示した。 2).斜面積雪内における融雪水浸透速度と融雪流出成分の分離 斜面上4地点(傾斜角はそれぞれ2,4,17,28度)において融雪水の積雪内浸透速度を測定した。傾斜角が大きな地点では融雪水の1部は斜面に平行に移動するが、その距離は短かく(40〜50cm)、大部分は積雪内へ浸透した。浸透速度は表面融雪強度に依存して変化したが、傾斜角度による相違は認められず、平地とほゞ同じ値を得た(快晴日中0.5〜0.8cm/min)。表面融雪水が積雪内(期間中の積雪深110〜80cm)を浸透し地面に達するまでの時間は100〜220分であり、表面融雪と河川流出のピーク時間の遅れの約半分を占めていることがわかった。次に河川水は地下水と表層水の2層流から構成されており、2層流が混合して流出する時にはイオン量が保存されるものと仮定して、融雪流出水の比電導度の変化から流出成分の分離を行なった。その結果表層流出分が20〜30%、地中流出分が70〜80%となり融雪出水時にも地中流出分が卓越することが確認された。
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