研究課題/領域番号 |
61025001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊地 勝弘 北海道大学, 理学部, 教授 (80000793)
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研究分担者 |
谷口 恭 北海道大学, 理学部, 助手 (40150247)
上田 博 北海道大学, 理学部, 助教授 (80184935)
播磨屋 敏生 北海道大学, 理学部, 教授 (90001859)
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キーワード | 局地的大雨 / 集中豪雨 / 山岳性降雨 / 地形性降雨 / 増幅作用 / レーダー / メソスケール / ブライトバンド |
研究概要 |
北海道胆振地方オロフレ山系南東斜面の局地的大雨の実態および発生機構を明らかにするために、1986年8月22日から9月16日までの26日間にわたる室蘭市南東の高台に設置したレーダー観測と、その期間を含む約2ケ月間、この南東斜面に雨量計16台、風向風速計7台、微気圧計2台によるメソスケールのネットワークを設け、集中観測を行った。 観測期間中の降雨は5例だったが、総降雨量が100mmを越えたのは、9月2〜4日と9月9〜11日の2例だった。最初の大雨の例は、台風8615号くずれの温帯低気圧によるもので、森野で123mm、白老で97mmであった。レーダー観測によれば最高25〜30dBの層状の降水エコーが南西から侵入しており、RHIでは高度5Kmにブライトバンドが見られ、氷晶過程を含む降水だった。特に前半、反射強度の強い部分が2層または3層になっており、1985年にも観測された雲の2層(多層)構造による降雨を示唆していた。このように上空に擾乱に伴う降水雲が広く分布している場合には、下層の対流性、または地形性の雲の存在、移動によって降雨分布が決まることが確かめられた。2番目の事例は西から寒冷前線が接近して、北海道は気圧の谷に入った降雨であった。森野で142mm、白老で77mm、大滝で僅か11mmと南東斜面で降雨量が多かった。この例でも、擾乱に伴う降水エコーがレーダーサイドの北西から東進してきて、山系を越え南東斜面一面に広がると同時に降水強度の2層構造が認められた。 以上のように、この地域においては、下層の対流性の雲、および登別方面の南東にはり出した二つの尾根や、白老川の谷などの地形の重要性が再確認された。また、雲の多層構造による降雨の増幅作用が、RHIレーダーによっても、また地上の雨量計ネットワークによっても、はじめてとらえることができた。
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