研究概要 |
関東大地震以来、地震時の行動の困難性をうたえる記述は多い。屋内よりの避難をはじめ、プラント制御室内の運転員の挙動など災害発生防止に関連することが多い。従来から断片に行って来た研究を総合しようとするのが本研究の目的である。 日本海中部地震では地震発生時の行動が多くのビデオに撮られている。このような行動の困難性は一つには心理的な要因があることは明らかである。本研究では、その要素を除外し、力学的要素をなるべく明らかにすることに重点を置いた。 CRTなどで表示し、それに対する回答をキィボードで打ち返すのが本実験の基本となっている。それに合せて、床上に腰を落した状態から起立する,立ち位置で歩行する,立った状態で小型電卓を操作するなどを併行して行った。加振方向は水平1方向および水平・垂直2方向であり、視野をさえぎった場合とそうでない場合について行った。歩行,立上りについては、実際の地震時の行動とは著るしく異った結果が得られ、鉄道車両の通行などからもわかるように通常の地震動のレベルではほとんど行動が阻害されないことが明らかとなった。CRT・キィボード操作については、第1に眼の振動による画面の認識の困難,拍2に上腕部の定位置へ持って行くことの困難さがある。4Hz程度にその共振があるとともに、0.4〜0.5Grmsまでは上半身を自由に保てるかどうかにかゝわっていることが明らかとなった。 ビデオ映像10カット、手記40例については概念的パターン化を行い、一部上述の実験の参考とした。今後とも継続的なデータ収集と分析が必要であると考えられる。とくに地盤・床などの波打ちが歩行を視覚的,感覚的にさまたげているようで、今回もそのような床を準備したが、その剛性と困難度および実験時の危険性が併立せず中止した。
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