土石流において、大きな岩塊が流れの先頭部へ多量に集積する現象を解明するため、土石流の現地観測を行うとともに、粒状体の偏析の実験を行った。 観測では、長野県焼岳上々堀沢に発生する土石流をとりあげ、流れの進行方向における石礫の粒度偏析状態の計測を試みた。ここでは新規備品のビデオコーダとビデオカメラを追加して設備を充実させた。しかし、本年度は土石流が発生せず、新たなデータは得られなかったので、既往データの再検討を行い、個々の土石流における岩屑の粒度偏析の実態を明らかにし、土石流の流速をはじめとする流動特性と偏析の関連性を検討した。既往データ解析では新規備品のフィルムビデオプロセッサーとビデオポインターを用いた。 実験では、まず円環水路を用いてガラス粒子剪断流における偏析特性を調べ、大粒子の混合比が減少していくと、動的篩効果による逆級化状態から嵩密度の差による級化状態に移行することを明らかにした。さらに、中立粒子について同様の実験を行って速度勾配と偏析の関係を調べたところ、分散圧力の効果とは逆の結果を得たが、その理由の検討は今後の課題である。 つぎに、直線水路に粒状体と水の混合物による擬似土石流を流下させて粒度偏析過程の計測を行った。その結果、粒状体としてガラスビーズを用いる場合には大小粒子の粒径比が動的篩限界粒径比以上であれば大粒子の先端集積が進行し易いのに対し、粒径比がこれより小さい場合には先端集積の進行が鈍化することを明らかにした。また前者の場合には大粒子の底面衝突効果の顕著なことが認められた。さらに、中立粒子を用いた場合には段波先端に水の不飽和な部分が形成され易く、そこへ大径粒子が顕著に集積する結果を得た。実際の土石流のごく先端部はこれと同様に石礫だけで形成されているが、この部分では動的篩による逆級化過程が卓越するため、大径礫の非混合過程が維持され易いことを結論した。
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