研究分担者 |
和田 秀徳 東京大学, 農学部・農芸化学科, 教授 (50011870)
坂本 充 名古屋大学, 水圏科学研究所, 助教授 (30022536)
原島 圭二 東京大学, 農学部・農芸化学科, 助手 (30011860)
野尻 幸宏 国立公害研究所, 計測技術部, 研究員 (10150161)
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研究概要 |
(1)酸性水中の炭酸ガス循環および代謝:(1)ルリ沼のウカミカマゴケ群体直上を含む4深度で溶存無機炭素濃度とその日変動を測定、(2)屋外小型実験池を用いて、藻類の増殖過程で水を酸性化し、溶存無機炭素の濃度変動を追跡 酸性湖沼のルリ沼では、pHと大気との平衡から考えられるよりも遙かに高い炭酸ガスの溶存を確認(約0.5ueg/l)、ウカミカマゴケ群体の表面近くの炭酸ガス濃度の日変動もかなりあることが確認された。このことから、ルリ沼ではpHが低く(約4.2)イオン性の炭酸は無いが、地下水または流入水から安定した溶存炭酸ガス供給があるために溶存無機炭素濃度は一次生産の制限因子には成っていないことが明かとなった。摩周湖でも湖底からの炭酸ガス供給がありアルカリ度の高い湧水があることが明らかになった。 藻類増殖池への酸添加実験を行なった。炭酸ガス利用型の藻類の光合成活性は初めはむしろ促進され、炭酸水素イオンも利用する型の藻類では途中から光合成活性が抑えられるようになった。何れの場合も中和(アルカリ度=0)後は溶存無機炭素濃度の低下にともなって光合成,呼吸ともに大幅に減少した。しかし、今回観察した藻類種では、pHの低下そのものの影響はあまり顕著ではなかった。 (2)酸性湖沼のルリ沼,赤沼の湿地帯の間隙水の組成を調べ、酸性湖沼内のウカミカマゴケや湖岸の水苔,芦などの生育は、主として耐酸性が強く、高濃度のマンガン,鉄などにも耐えられることなどによるものと推定できた。 硫酸還元菌の調査を行ない、幾つかの地点で活発な硫酸還元が行なわれていることが確認された。硫酸や硝酸の生物的還元による酸の除去は、機能的には優れたものであり量的にも決して小さくない事が示唆された。
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