本研究においては、陸水環境として筑波学園都市内に存在する中栄養型水界環境の洞峰沼、陸水環境から汽水環境を経て沿岸環境へ移行していく水界環境としてカナダ国ブリティッシュコロンビア州に存在するFraser River 河口域において中栄養型水域と富栄養型水域、また、Campbell River 河口域において貧栄養型水域と中栄養型水域を調査対象に選んで、その環境とそこに生息する微生物の増殖速度との関係を調査研究した。微生物の増殖速度は、物質環境制御装置を用いる疑似現場法により測定している。 洞峰沼においては、植物プランクトン群集増殖速度をMonod(1949)の生長式に遵って周年に渉り律速する制限要因は、沼水中のアンモニア濃度であることが判明した。そして、燐酸濃度と硝酸濃度が植物プランクトン群集生長速度に非制限要因としてではあるが、制限要因に次いでそれぞれ統計的にも高度に有意な律速を行っていることが明らかになった。 一方、洞峰沼における細菌群集生長速度をMonod(1949)の生長式に遵って周年に渉り律速する制限要因は沼水中の溶存態有機物であることが判明した。そして、温度と細菌群集密度が細菌群集生長速度の非制限要因としてではあるが、制限要因に次いでそれぞれ統計的にも高度に有意な律速を行っていることが明らかになった。 カナダ国ブリティッシュコロンビア州における淡水環境、汽水環境および沿岸環境に存在する中栄養型水塊中の微生物増殖速度は洞峰沼中の微生物増殖速度分布範囲と殆ど一致していた。例外として、汽水環境においては中栄養型水塊中の微生物生長速度が富栄養型水塊中の微生物生長速度範囲に及んでいることがあったが、この様な場合は常に河川水と海水が不安定に混合する河口域で認められた。
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