高原野菜栽培が村の経済の中心となり、森林に対する経済的依存度の低下した川上村では、森林との実利的な関わりがなくなるなかで、日常生活での森林との関わりやレクリェーションの面や信仰などの面での森林との関わりもしだいになくしてしまった。一方、過疎化に悩みながらも、日常生活においてなお森林と関わりをもっている南相木村民は、林産物を多岐にわたって生産している。南相木村民の森林意識はきわめて具体的であり、生活意識として明白なものであり、森林との関わりは、ただ単に林産物利用の面での関わりだけでなく、自然休養利用の面や、生活環境保全の面にまでおよんでおり、森林を多元的、複合的に活用している。 森林は本来多元的な存在であるので、多様な森林との関わりは可能であろう。本研究の結果からみると、森林を木材生産の場として意識している人の多い南相木村では、村民の森林との関わりが林産物生産の面だけでなく、自然休養や環境保全の面にまでおよんで多面的・重複的であり、木材生産をおこないながらも郷土景観を美しく保っているのに対して、森林を木材生産の場として意識している人の少なくなっている川上村では、村民の森林との関わりが少なくなり、単純化してきている。 今後、山村に健全な森林を維持していくためには、少なくとも山村居住者には森林を木材生産の場として意識するようになって貰うことが必要条件であると考える。
|