水系サイズ排除クロマトグラフィーにより環境水中のフミン酸の濃度および分子量の迅速測定法を確立した。本法により水中のフミン酸を0.1ppmまで試料の直接注入により可能である。木曽川、長良川および本学近くの志登茂川のフミン酸の濃度は2〜4ppmで、分子量は200〜6000の範囲であった。また土壌中のフミン酸の分子量は200〜25000の範囲で、中心分子量は約2000であった。環境水中のフミン酸は水温の低下あるいは経時によりアグレゲーションし、また水中の微小無機コロイド表面に吸着して不溶の微粒子を形成していく過程を推定した。フミン酸の酸性度はPKaで4.2〜4.7で、酸性基1個当り分子量約150であった。フミン酸溶液に銅イオンを加えていくとpHの低下が認められ、フミン酸と銅イオンとの錯体生成に伴い、水素イオンの対出が確認された。銅イオンをさらに加えていくとフミン酸-銅錯体の沈殿が生成し、この場合フミン酸のほとんどが沈殿する。この沈殿の銅イオンの量は沈殿に対し1.9〜3.5%であった。フミン酸の錯形成能は比較的小さく、銅イオンがある程度以上になったところで直ちに沈殿を生成する過程が認められた。また沈殿中にはフミン酸-銅錯体の外、錯体に吸着したフミン酸および錯体に吸着した銅イオンも確認され、沈殿物の存在状態はかなり複雑であることが分った。鉄イオンについても同様に錯体生成に伴い水素イオンを対出し、フミン酸に対する鉄イオンの錯生成の進行とともに鉄含有量は増加し、最大約10%となった。この場合も錯体の沈殿に対するフミン酸の吸着および鉄イオンの吸着が確認された。フミン酸のこのような挙動は環境水中の重金属イオンの除去にフミン酸を活用することが可能であることを示しているものといえよう。今後この方面の研究をすすめていく予定にしている。
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