研究概要 |
1 目的 著者が自然界からスクリーニング・単離したヒ素耐性淡水産藻類は、ヒ素を高濃度に生体濃縮する能力を有するので、これらの生命活動を利用してヒ素汚染水の浄化を行うための基礎的知見を得る。ヒ素の高等生物に対する毒性は、その化学形によって大きく左右し、高度にメチル化されたヒ素化合物の毒性は極めて小さいことが分っており、藻類を取り込んだ無機ヒ素をメチル化する可能性があるので、藻体中のヒ素の化学形を調べる。 2 結果を考察 (1)純粋培養に成功したクロレラ,ヒドロコリウム,ノストック,ホルミジウムの4種について、ヒ素耐性と生体濃縮を調べた結果、これらは全て数千ppmのヒ素溶液に耐性があり、ヒ素生体濃縮は培地ヒ素濃度の増加とともに増加することが分った。(2)ヒ素を生体濃縮した藻体を2規定水酸化ナトリウム水溶液で湿式分解したのち、著者が自作した装置で、混在する非メチル化ヒ素、モノメチル化ヒ素、ジメチル化ヒ素,トリメチル化ヒ素をそれぞれアルシン,モノメチルアルシン,ジメチルアルシン,トリメチルアルシンに還元し、それらの沸点の差を利用して、原子吸光光度計により分別定量した。その結果、4種のいずれの藻類についても、メチル化ヒ素が検出されたが、非メチル化ヒ素に比べて濃度が小さかったので、藻体をメタノール,クロロホルム,水で分画し、脂質画分,水溶性画分,抽出残塩について、それぞれ湿式分解したのちメチル化ヒ素を分別定量した。すべての藻類について、メチル化ヒ素のうちジメチル化体が最も多く、脂質画分,水溶性画分に含まれていた。モノメチル化体をトリメチル化体はクロレラの水溶性画分に見出れたが、他の藻類ではこん跡量のみであった。総ヒ素のうち大部分を占めていた無機体ヒ素化合物は、細胞中で遊離の化合物として存在するのではなく、細胞組織成分(糖,タンパク質)と強く結合していることがわかった。
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