研究課題/領域番号 |
61035068
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
吉村 昌雄 近大, 医学部, 教授 (90111038)
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研究分担者 |
山口 真由 近畿大学, 医学部, 助手 (50122122)
野田 裕司 近畿大学, 医学部, 助手 (00122086)
杉山 静征 近畿大学, 医学部, 助教授 (50075058)
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キーワード | 法医学資料 / 総水銀 / メチル水銀 / ヒト体内蓄積 / 汚染指標 / 長期的変動 |
研究概要 |
1986年に大阪府下の法医学資料(死亡直前まで通常の生活をしていたヒトが急死し、その法医解剖体から採集した臓器・組織)のうちから、水銀の人体汚染度を検索するための標的臓器として成人(40〜50才代の男23例,女22例)の大脳・小脳・肝臓・腎臓および頭毛を選び、前回と同様に総水銀(以下T-Hg)はゼーマン水銀分析計を用い、メチル水銀(以下M-Hg)は脂肪抽出処理後ガスクロマトグラフィーにより測定(単位:μg/g in wet)した。この成績をもとに過去10年間における成人体内水銀濃度の経年的変動を検討するため、すでに検索済みの1976・1981年の成績と本年の成績とを比較してみた。成人の体内に蓄積しているT-Hg濃度レベル(mean)は、頭毛>腎>肝>小脳〓大脳の順であり、過去2回の順位と変っていない。大脳と小脳では5年前と相似した値であり、10年前よりともにやや高い値を示すが分布幅を考えると、10年間ほぼ同一レベルで経過したものということができる。肝と腎では5・10年前よりやや低い値を示して減少傾向がみられるが、その有意性は認められない。頭毛のT-Hg濃度は10年前の約1/2に低下し有意に漸減していることがわかる。M-Hg濃度レベルは、肝>小脳≒腎≒大脳の順であり、10年前の腎と小脳の順位が逆転している。大脳・小脳・腎では10年前より約25〜40%位低い値を示し漸減の傾向がみられる。肝では10年前の約3/5の低値を示し10年間にほぼ直線的に減少している。また10年間におけるT-Hg中に占めるM-Hgの割合の変動を検討してみた。肝と腎ではM-Hgの割合に、あまり変動がみられないが、大脳と小脳では有意に低下している。 水銀剤の使用がきびしく規制されてから約15年を経過した現在でも、以上のような水銀のヒト汚染指標の変動からみても、依然として予想を上まわるレベルで日本人の体内に水銀剤の侵入蓄積が続いていることは明らかである。1991年にも同検索を行う計画である。
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