研究課題/領域番号 |
61035069
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研究機関 | 国立公衆衛生院 |
研究代表者 |
松下 秀鶴 公衆衛生院, その他, その他 (30124407)
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研究分担者 |
田辺 潔 国立公衆衛生院, 地域環境衛生学部, 主任研究官 (60150174)
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キーワード | 多環芳香族炭化水素 / カラム濃縮 / 高速液体クロマイト / 分光蛍光法 / 個人サンプラー / 個人被曝量 |
研究概要 |
環境空気中の超微粒子は、肺内沈着率が高い上、発がん関連物質を多く含んでいるため、当該粒子による汚染実態や生体影響を明らかにする必要がある。しかし、試料採取技術や発がん関連物質の高感度分析技術が十分でないため、その実態はあまり明らかでない。そこで本研究では、低騒音超微粒子サンプラーの開発、微量試料中の多環芳香族炭化水素(PAH)やニトロアレーンの高感度分析法の開発等を行ってきた。本年度はさらに、個人サンプラーで得られる極微量試料中のPAHの分析法として、カラム濃縮・高速液体クロマト・分光蛍光法を開発し、個人被曝量の直接測定の可能性について検討した。 HPLCにおいては、通常数〜数+μlの試料液しかカラムに導入されず、採取された目的物質のごく一部だけが分析に用いられる。そこで、試料液の大量導入を実現することによって、実用上の感度を向上させ、極微量試料中のPAHの分析を可能とした。すなわち、試料導入時には水含量の多い移動相を用いてPAHを濃縮用カラムの先端に濃縮し、分析時にこれをアセトニトリル含量の多い分離分析用移動相でバックフラッシュ法により溶離し、分離用カラムに導入して分離分析を行った。本法を用いると、分離能を損わずに0.5mlまで試料液を導入することができ、その時の検出下限はベンゾ〔a〕ピレンでは6pg/ml(絶対量3pg)、ベンゾ〔k〕フルオランテンでは15pg/ml(7pg)、ベンゾ〔ghi〕ペリレンでは20pg/ml(10pg)であった。また、保持時間及びピーク高さの再現性は、相対標準偏差でそれぞれ0.20〜0.24%及び1.8〜2.7%と良好であった。そこで、実際に個人サンプラー用ミニポンプ(重量350g)を用いて24時間で約300lの空気を吸引して浮遊粒子を捕集し、得られた極微量試料中のPAHの分析を行た。その結果、本分析法により、従来困難であった極微量浮遊粒子試料中のPAH分析を精度良く簡易に行い得ることが確認され、個人被曝量の直接測定が可能となったと考えられた。
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