研究概要 |
本研究は(1)ラットおよびヒトの腸内菌によるトリチウムガスの酸化について比較検討し、トリチウムガスの酸化能を持つ腸内菌を分離し同定することによってどのような腸内菌群がトリチウムガスの体内酸化に与かっているかを明らかにすること、(2)土壌におけるトリチウムガスの酸化の実体を把握するとともに、その土壌から空気中トリチウムガスを実際に酸化する菌を分離することを試みた。研究成果を以下に述べる。 1.腸内環境が嫌気的であることから、各種の嫌気性菌選択分離・鑑別用培地を用いて、ラットおよびヒトの糞便よりトリチウムガス酸化能をもつ腸内菌を多数分離し、同定した。トリチウムガス酸化活性を持つ分離菌株の大半は腸内の最優勢菌群であるBacteroidesやPeptostreptococcusに属するものであった。またVeillonella purvulaは最も酸化活性が高い菌株であった。 2.土壌によるトリチウムガスの酸化を定量的に測定する方法を確立し、山林土壌,水田土壌,畑土壌についてトリチウムガスの酸化活性とその特性を調べた。酸化活性は、土壌表層で最も強く、0℃から75℃まで広巾い温度範囲で検出され、土壌の水分含量で大きく変化し、土壌の乾操あるいは加湿により著しく低下した。各種滅菌処理や阻害剤添加により、トリチウムガス酸化活性の全てあるいは一部が失われた。 3.各土壌よりトリチウムガス酸化能をもつ好気性細菌を分離した。分離菌株の6割がグラム陰性菌であった。これらの同定は一部についてはほぼ完了したが、さらに検討中である。
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