トリチウム増殖用ブランケット材セラミックスは焼結体として用いられる。リチウム原子の核反応によって生成したトリチウムの回収には、そのブランケット内での拡散が強く影響を及ぼし、核融合炉の効率に対して決定的影響を持つ。この拡散は、リチウム化合物内の拡散と粒界での拡散に大別され、前者は化合物の粒度と完全性が、後者では化合物焼結体の密度および使用に伴う粒子同志の焼結が関係している。本研究では、リチウムのスズ酸塩酸化物【Li_2】Sn【O_3】を中心に、1)水酸化物沈澱の合成を通して、粒度を制御しうる合成法を確立するとともに、2)その焼結性の制御を試みた。 1)【Li_2】Sn【O_3】の合成ーLiOH水溶液にSn【Cl_4】水溶液を滴下すると、Sn【(OH)_4】がいったん沈澱するがすぐ再溶解する。さらにSn【Cl_4】水溶液を滴下し続けると、【Li_2】Sn【(OH)_6】が白色沈澱として生成しはじめる。Sn【(OH)_4】が析出するのを避けるため、水溶液のpHを11.5以上に保ちながら沈澱をろ過、回収する。この沈澱は単一相の【Li_2】Sn【(OH)_6】であり、650℃以上で単一相の【Li_2】Sn【O_3】に熱分解する。この合成法は、その過程で活性なリチウム酸化物を遊離することがなく、他の合成法より優れている。 生成【Li_2】Sn【O_3】は約0.3μmの微粒子が集合した多孔質であった。熱分解温度を1000℃まで上げても、その多孔質が保たれている。2)【Li_2】Sn【O_3】の焼結性ー合成した【Li_2】Sn【O_3】をタブレットに成型したのち、1000℃での保持時間に伴う高密度の変化を測定した。高密度は熱処理初期にわずかに増加するが、その後は一定で、全く緻密化を生ぜず、気孔率を40〜50%に保つことができた。 3)【Li_2】Sn【O_3】の中性子照射挙動ー合成した【Li_2】Sn【O_3】の中性子照射によるトリチウムの生成が、低温から検出され、多孔質粒子であることとよい対応が得られた。
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