研究課題
1.コーティング材としてTiCを選び、PVD法によってSUS316材(厚さ1〜15mmの板材)に2〜10μmの厚さに被覆した引張り試験片(平行部長さ100mm、平滑及び切欠き付)を試験した。TiC被覆により平滑試験片では降伏応力の増加と変形の減少が認められた。しかし切欠き付試験片では切欠き底付近の応力集中によってTiC被膜の破断とはく離を生ずるためTiC被覆による降伏応力と変形の変化は僅かであった。このことからTiC被覆材では部分的な応力集中を避けることが重要であることがわかった。2.セラミックスコーティング材のヘアークラックは引張り応力と直角に生成し応力の高い部分ではその数が多くなる。これらのクラックは大部分が表面に達しているので走査型電子顕微鏡により正確に計測できる。このほかせん断応力の高い部分ではすべりによってTiC膜のはく離を生ずる。この場合はヘアークラックが膜内に生ずるので計測が難しいが、はく離の形状と面積から、ヘアークラックの数を推定することができる。3.はく離はTiC表面に並行なせん断応力によってTiC層内にすべりを生ずるために起ると考えられる。すなわちTiCの表面とSUS316材に近い部との間に相対的な力が働きTiC膜内の欠陥を起点としてはく離が発生する。4.熱サイクルを受ける2相材料のき裂解析の第1段階として引張り応力を受ける單相材料(TiC及びSUS316切欠き付試験片)の応力計算を行い切欠き底附近の応力集中の状態を調べ、応力分布図を作成した。5.TiC被覆のSUS316材の靜疲労実験により高温(600℃)ではSUS316の塑性変形により低い応力でTiC被膜にヘアークラックを生ずる。降伏応力以下の応力を長時間負荷した靜疲労実験では降伏応力の80%の応力によりTiCのクラックが成長するが、降伏応力の60%の応力ではクラックの進展は抑制されることがわかった。