研究概要 |
本年度は、電界効果によるより高度な発光出力スィッチングの実証、および電界下での量子井戸の光物性を把握することを目的として研究を進め、新たに以下の知見を得た。 1.試料の容量低減により、印加電圧パルスに対する応答時間300ピコ秒でのフォトルミネッセンススイッチングを観測した。 2.GRIN-SCH量子井戸構造の試料を用いた実験で、量子井戸への電界効果によるゲイン変調の結果,半値幅140ピコ秒,立ち上がり時間100ピコ秒以下のレーザ光パルスが発生することを確認した。 3.電界効果による発生出力変調の理論的検討を行なった結果、パルス幅5ピコ秒、15ギガヘルツの光変調が可能であることを見出した。 4.量子井戸構造の試料について、エレクトロリフレクタンス測定を室温で行ない、量子井戸においては励起子が安定に存在し、励起子遷移に対する電界効果により最大4%の大きな屈折率変化が得られることを見出した。 5.量子井戸構造を有する試料について、エレクトロアブソープション、エレクトロリフレクタンス測定を行ない、電界による電子井戸の光吸収係数変化と屈折率変化の関係について検討を行なった。この結果、電界効果による光吸収変化は大きいが、屈折率変化は小さい、光変調器としての応用上極めて有効な波長領域が存在することを見出した。 6.上記4,5の実験結果は、量子井戸の光吸収係数、屈折率に対する電界効果についての理論計算の結果とよく一致する。また、この電界効果の光素子への応用に関して、理論的な検討を行ない、量子井戸構造、動作波長を最適化することにより、周波数チャーピングの少ない吸収型光変調器、損失の少ない光スイッチ素子が実現可能であることを示した。
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