研究概要 |
1.血管病変成立における血行力学的因子の解析: 動脈硬化は血管の分岐等の特殊な部位に限局性に好発する。この局在発生に血圧,粘性,ずり応力等の血行力学的因子が密接に関与すると考えられる。新見は血管近傍における血流構造を顕微鏡下に観察した。神谷は牛胎児の下行大動脈から内皮細胞を化学的処理により採取して培養し、培養液中で平板を回転してずり応力を細胞に加えた。その結果ずり応力を受けた細胞ではDNA合成の亢進が起こることを認めた。野一色は人工血管の治癒過程を構造と機能の面から観察し、再生平滑筋細胞は血管壁にかかる張力の方向に配列すること、内皮細胞は血流の方向に配列することを実証した。 2.栄養血管障害に関する生理と病理: 大橋は大動脈壁に血液を供給する栄養血管を灌流し、栄養血管を流れる血流の調節機序を解析した。居石は大動脈の栄養血管である肋間動脈を結紮して解離性大動脈瘤の成因を検討した。井上は心筋への血流を直接に調節している微少循環障害を微粒子塞栓によって作製しアデノシンやα交感神経作用の役割を解析した。 3.血管病モデルの作製と病態の解析: 京極は動脈炎(高安病,多発性動脈炎,SLE,川崎病等)の実験動物モデルを開発し、内膜肥厚の主役として活性化する細胞を特定化し、その増殖機構に免疫機構が関与する機序について解析した。小澤は炎症や虚血に際して遊離する白血球から遊離するロイユトキシンを分離精製し、その作用を検討した。住吉は内皮障害に伴う血栓形成やその器質化を家兎で発生させ、その組織像がヒトの粥状硬化巣に極めて似ている事を明らかにした。家森は心筋梗塞易発症ラットを選別した。中村は冠動攣縮脈モデルを開発しその発生機序に冠動脈内膜皮厚が重要な役割を演ずることを明らかにした。
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