生物の適応戦略と社会構造

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61133003
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 寺本 英 京大, 理学部, 教授 (30025225)
• 研究分担者: 日高 敏隆 京都大学, 理学部, 教授 (70014892) ; 河合 雅雄 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (10027477) ; 川那部 浩哉 京都大学, 理学部, 教授 (60025286) ; 伊藤 嘉昭 名古屋大学, 農学部, 助教授 (50115531) ; 松田 博嗣 九州大学, 理学部, 教授 (10027336)
• キーワード: 社会構造 / ソシオバイオロジー / エソロジー / 適応戦略 / 進化 / 進化生態学

研究概要

昭和58〜60年度の3年間におよぶ本特定研究の研究成果は下に述べるとおりであるが、本年度はそれらの研究成果をもとに国際シンポジウム「生物の適応戦略と社会構造」が計画され、この分野で活躍する外国の専門研究者17名の参加を得て実施された。本シンポジウムはいろいろな動物群あるいは数理モデル等の各分野の専門家が一同に会して動物の社会構造や社会行動についての諸問題を議論したユニークなものであり、本特定研究の研究成果に国際的な評価を与えるものとなった。シンポジウムの内容は特定研究の研究成果を含め英文報告書として取りまとめられた。また、それとは別に「生物の社会構造」と題する和文の啓蒙書も出版されている。
3年間の本特定研究の研究成果は次のとおりである。昆虫における真社会性の進化、昆虫および甲殻類の交尾戦略・繁殖戦略の研究では、野外調査を主体に、特に南西諸島での本格的な調査とともにいくつかの事実の発見があり繁殖戦略・社会構造の理論の発展を得た。脊椎動物では魚類,鳥類,哺乳類を中心に調査研究が組織的に遂行され、交尾・育児・採餌行動と社会構造の詳細な比較検討が行なわれた。霊長類についてはニホンザルの調査を中心に、新しい調査方法によって採餌戦略・繁殖戦略によるサル社会の分析がなされ、個体群維持機構に関する事実が見い出された。ヒトに関する研究は旧来の伝統的風習や制度の残る沖縄や東北の僻地社会で重点的な調査が行なわれ貴重な資料が集収された。またそれに基づく社会構造と生存戦略の分析をとおしてヒト社会の特徴が抽出された。これらの広い研究対象で明らかにされてきた種々の動物行動の適応戦略的視点からみた統一的理論および社会構造形成モデル理論の探求が個体群動態論と適応戦略論の融合した理論として世界に先がけて精力的に行なわれた。

研究成果

• [文献書誌] It【o!~】,Y.: Konty【u!~】. 54. 192-202 (1986)
• [文献書誌] It【o!~】,Y.: Monitore zool. ital. (N.S.). 20. 241-262 (1986)
• [文献書誌] Kimura,K.: Appl. Ent. Zool.21. 28-32 (1986)
• [文献書誌] Kimura,K.: Res. Popul. Ecol.28. 295-304 (1986)
• [文献書誌] Kon,M.: J. Ethol.4. 49-58 (1986)
• [文献書誌] Johki,Y.: Mem. Fac. Sci. Kyoto Univ. (Ser. Biol.). 11. 29-42 (1986)
• [文献書誌] Matsuda,H.: J. Theor. Biol.122. 251-262 (1986)
• [文献書誌] Matsuda,H.: In Lecture Notes in Biomathematics Springer-Verlag. (1987)
• [文献書誌] Matsuda,H.: In Animal Societies: Theories and Facts Japan Scientific Societies Pub. Association. (1987)
• [文献書誌] Numata,H.: Appl. Ent. Zool.21. 119-125 (1986)
• [文献書誌] Otsuka,K.: J. Ethol.4. 147-152 (1986)
• [文献書誌] Sato,Y.: J. Insect Physiol.32. 281-286 (1986)
• [文献書誌] It【o!~】,Y.: In Animal Societies: Theories and Facts Japan Sci. Soc. Press, Tokyo. (1987)
• [文献書誌] Kawamichi,T.: In Animal Societies: Theories and Facts Japan Sci. Soc. Press, Tokyo. (1987)
• [文献書誌] Matsuda,M.: In Animal Societies: Theories and Facts Japan Sci. Soc. Press, Tokyo. (1987)
• [文献書誌] Shigesada,N.: In Lecture Notes in Biomathematics Springer-Verlag. (1987)
• [文献書誌] Takeishi,M.: Ecol. Res.1. 37-46 (1986)
• [文献書誌] Tsubaki,Y.: J. Ethol.4. 59-68 (1986)
• [文献書誌] Tsubaki,Y.: Anim. Behav.35. 518-525 (1987)
• [文献書誌] Tsubaki,Y.: Behaviour. 97. 234-252 (1986)
• [文献書誌] Tsuchida,K.: J. Ethol.(1987)
• [文献書誌] Tsuji,K.: Appl. Ent. Zool.21. 377-381 (1986)
• [文献書誌] It【o!~】,Y.: J. Ethol.4. 73-80 (1986)
• [文献書誌] Shigesada,N.: Theoretical Population Biology. 30. 143-160 (1986)
• [文献書誌] 土肥昭夫: 哺乳動物学雑誌. 11. 77-79 (1986)
• [文献書誌] 土肥昭夫: 長崎県生物学会誌. 31. 17-22 (1986)
• [文献書誌] 仲井靖: 日本応用動物昆虫学会誌. 30. 1-6 (1986)
• [文献書誌] 杉山幸丸: 季刊人類学. 18. 3-46 (1987)
• [文献書誌] 伊谷純一郎: "自然社会の人類学-アフリカに生きる-" アカデミア出版会, 393 (1986)
• [文献書誌] 長谷川政美: "「なわばりの生態学」-生態のモデルと空間パターンの統計-" 東海大学出版会, 206 (1986)
• [文献書誌] 糸魚川直祐: "「繁殖行動と適応戦略」-ニホンザル集団を中心に-" 東海大学出版会, (1987)
• [文献書誌] 北原隆: "「道具の起源」-類人猿から初期人類への道具行動の発展-" 東海大学出版会, 172 (1986)
• [文献書誌] 東和敬: "トンボの繁殖システムと社会構造" 東海大学出版会, (1987)
• [文献書誌] 伊藤嘉昭: "狩りバチの社会進化-協同的多雌性仮説の提唱-" 東海大学出版会, 205 (1986)
• [文献書誌] 丸橋珠樹: "屋久島の野生ニホンザル" 東海大学出版会, 201 (1986)
• [文献書誌] 松村澄子: "コウモリの生活戦略序論" 東海大学出版会, (1987)
• [文献書誌] 森梅代: "ニホンザルメスの社会的発達と社会関係" 東海大学出版会, 192 (1986)
• [文献書誌] 中園明信: "魚類の性転換" 東海大学出版会, (1987)
• [文献書誌] 大場信義: "ホタルのコミュニケーション" 東海大学出版会, 241 (1986)
• [文献書誌] 坂上昭一: "独居から不平等へ-ツヤハナバチとその仲間の生活-" 東海大学出版会, 264 (1986)
• [文献書誌] 田中二郎: "災害と人間行動" 東海大学出版会, 235 (1986)
• [文献書誌] 山岸哲 編: "鳥類の繁殖戦略(上)" 東海大学出版会, 167 (1986)
• [文献書誌] 山岸哲 編: "鳥類の繁殖戦略(下)" 東海大学出版会, 203 (1986)
• [文献書誌] 山村則男: "繁殖戦略の数理モデル" 東海大学出版会, 177 (1986)
• [文献書誌] 山根爽一: "チビアシナガバチの社会" 東海大学出版会, (1987)