免疫応答系の調節を担うリンフォカインとその受容体の構造と機能解析を行い、更にはそれらの遺伝子の発現制御機構を分子レベルで解明することを目的として、主にインターロイキン2システム(IL-2システム)について研究を行った。まずヒトIL-2とその受容体(IL-2R)の遺伝子が、活性化T細胞特異的に発現されるために必要なDNA配列を同定することに成功した。つづいて、これらの遺伝子が成人T細胞白血病の原因ウイルスであるHTLV-1の感染によってどのような影響を受けT細胞白血病化に関わっているかを調べるため、研究を行った。その結果HTLV-1の産物であるp【40^x】タンパクがヒトIL-2及びIL-2R遺伝子の発現制御領域に働いてこれらの遺伝子の転写を活性化することを明らかにした。更にIL-2遺伝子はこのp【40^x】と抗原によるT細胞の刺激によって相乗的に活性化される証拠を得た。一連の事実はウイルスの感染と抗原刺激とがT細胞におけるIL-2システムの異常作動を誘発し、細胞の悪性増殖化に深く関わっているものと考えられる。このようなIL-2システムの異常作動が実際に細胞の悪性増殖につながるかどうかを調べるために、ヒトIL-2を生産するレトロウイルスの作製に成功した。今後このようなウイルスをT細胞に感染させ、その生物学的意義を明らかにできるものと考えられる。更にIL-2Rに関しては遺伝子に様々な変異を加えることによって受容体の構造と機能の解析を行った。その結果、TAC抗原と呼ばれるIL-2Rと会合し、実際に機能的受容体として働く他の分子の存在と、実際そのような分子がIL-2のシグナル伝達に直接関わっている証拠を得た。TAC抗原はCキナーゼによるリン酸化を受けるという報告があるが、我々の一連の研究により、そのようなリン酸化が起きたとしても実際のIL-2Rの構造機能には関与しないことも判明した。
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