研究概要 |
糖質資源の高次利用を目的として、天然に豊富に得られる糖質を素材としたより付加価値の高い化合物への化学変換研究を行なっている。そして、これまでに、1)単糖からアミノ配糖体抗生物質の合成、2)オレアネン型トリテルペンオリゴ配糖体の化学変換、3)ヌクレオシドのシクリトール類縁体などの生物活性シクリトール誘導体の合成、について検討している。そのうち、単糖からアミノ配糖体抗生物質の合成研究では、D-グルコサミンなどの単糖から今日、最も有効な抗生物質の一つであるジベカシンを合成するとともに、その合成過程で副生するシクリトール部分の立体異性体を利用して6-エピ-ジベカシンなどの非天然型アミノシクリトールオリゴ配糖体の合成に成功している。本研究では、オレアネン型トリテルペンオリゴ配糖体の化学変換研究として、大豆から大量入手可能なsoyasaponinIなどのグルクロニドサポニンからアミノシクリトールオリゴ配糖体を合成した。さらに、生薬の延命皮などから容易に得られるオレアネン型トリテルペンやそのオリゴ配糖体から電極反応による化学変換法を用いて、生物活性の期待できる11-オキソ-12-エン型化合物への変換を行なった。また、カルボニル基をメディエータとする分子内間接電極酸化反応による11-オキソ-12エン型トリテルペンオリゴ配糖体の新規骨格変換反応を見い出し、甘草の主成分グリシルリチンからA-ノル-B-ホモ型トリテルペンオリゴ配糖体を合成した。ヌクレオシドのシクリトール類縁体合成については、電極脱炭酸反応を用いたシクリトール合成法によって、D-グルクロン酸から得られるアミノシクリトールを出発原料として、プリンおよびピリミジンのシクリトール類縁体を合成するとともに、シクリトール部分のデヒドロ誘導体の合成やピリミジン部分へのフッ素の導入などの化学修飾を行なった。この様に、当初の計画,目的に対し、ほぼ満足できる結果を得ている。
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