研究概要 |
本研究では、(a)地下深部でカンラン石が塩素等のハロゲン元素を含む流体で変質した時の初生相の塩素含有細粒ジャモン石族鉱物相のキャラクタリゼーションとして組成と構造についての詳細な検討,(b)この初生の細粒ジャモン石相を加熱ステージ上での動的解析(設置),(c)地球内部の細粒ジャモン石相と未分化炭素質隕石中の層状珪酸塩鉱物相との対比的研究が目的である。細粒ジャモン石相の組成は、普通の大きいジャモン石相のクリソタイル・アンチゴライトの8面体OC(Mgなど)と4面体Pc(Si)との比OC/TC≒1.5から大きくはずれ、カンラン石(OC/TC≒2.0)に近い1.7〜1.9に変動するので、カンラン石からの最も初期の変質物であることが分った。また、この細粒相の分布は塩素分布と一致するので塩素がキー元素である。この初生相の組成は、変動し化学量論的でないのが特徴である。細粒相の構造は、アモルファスオリビン相からのエンブリオとして波状の7A゜格子が形成されているのが多い。イオン半径の大きいOH・Clが混入したために、こきざみな波状と10mmスケールのドメインが形成されている。混合領域では、わん曲リザダイト状,円筒状クリソタイル状そして小板状リザダイト状のエンブリオ7A゜面の集合体となっている。この細粒相が更にジャモン石化して通常の粗大な結晶に成長していくプロセスを動的に実現し観察するために加熱ステージ上で1300℃まで昇温すると、組成が通常のジャモン石相のOC/TC比になることが分った。またこの実験で塩素と水分が昇温とともに細粒相付近から脱け出ることも分った。隕石中の層状相は加熱によってベイン状なものが明瞭に形成できることも分った。組成と構造からは、隕石中のはFeが多くリボン状組織を呈し、CV3に比べてマーチソン隕石CM2はFeがより少なくて地球のジャモン石相に近いが、一般的に隕石中のは地球内部の細粒ジャモン石相の初生物よりはずっと末期に形成されたと考えられる。
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