短周期超格子を新しい混晶半導体材料として有用なものとするために、本研究では(1)超格子内のヘテロ界面構造の解明と平坦性制御法の確立、(2)分散関係など電子状態の解明、(3)電子伝導と光学特性の解明と新機能の探索を目的として研究を進めている。以下に本年の主要成果を記す。 (1)ヘテロ界面構造の原子スケールでの解明と完全平坦化技術の確立 通常のMBE法で作製したGaAs-(AlGa)As量子井戸の界面には、高さが単原子層の凹凸が存在する。螢光線幅と成長条件の相関を調べ、この凹凸の横方向の寸法lが上側の界面で約20〜30nmであり、同様の寸法を持つ励起子の発光過程を乱して線幅を広げるが、下側の界面ではlが3〜4nmであるため、擬似平坦面とし振舞うことを示した。なおMBE成長中に分子線の供給を中断して物質の拡散を促すと、上側の界面でlが数百nm以上に増大して、真に中坦な界面となることなどが判明した。 (2)超格子の分散関係ならびに共鳴トンネル現象の解明制御 多重障壁構造をトンネル効果で抜ける電子の共鳴的な干渉効果は超格子の分散関係や二重障壁ダイオードの電流電圧特性を支配する重要な現象である。本年は、この共鳴トンネル電流Jのダイオード構造依存性を調べ、特にJが障壁(AlGa)As層のAl組成に指数関数的に依存して減少することなどを見出した。これより、(AlGa)Asが間接遷移化してもJはΓ点におけるエネルギー差で決定されることが明らかとなった。 (3)その他の成果 界面に沿う電子伝導特性に関し、電子移動度の決定機構を明らかにした。又、界面凹凸による散乱に関しても新知見を得つつある。
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