研究概要 |
テトラヒメナには【Ca^(2+)】-依存的機能の現われる繊毛逆転反応や細胞分裂等がある。我々は原生動物で初めてcalmodulin(CaM)を見出し、その機能を調べてきた〔Calcium and Cell Function,【II】,297-323(1982)〕。(1)CaMでは繊毛逆転反応時に如何なるCaM-結合蛋白質(CaMBP)が【Ca^(2+)】流入後に仂くかを調べてきた。本年度はCaMBPsをCaMカラムで精製を進め、その中に微小管と強く相互作用する2〜3種があることを、(【i】)チュープリンと特異的に結合するEPC-カラムでの共溶出、(【ii】)テトラヒメナ繊毛微小管の重合・脱重合系を用いた重合微小管との共沈、等から確かめた。(2)我々はCaM以外に別の【Ca^(2+)】-結合蛋白質(TCBP-10)が繊毛内に存在することを報告した(J.Biol.Chem.,258,13978-13983,1983)。東北大学小西研究室との共同で、そのアミノ酸配列を決定した(未発表)。しかし、イムノブロットの結果から生体内でこの蛋白質は10Kではなく25Kである可能性が生じてきた。そこで、推定しうるその遺伝子配列から5種のヌクレオチドを合成し、これらをprobesにして共通にハイブリダイズするテトラヒメナのDNAバンドがあることを確かめた。現在、この遺伝子をもつファージコロニーをスクリーニング中である。(3)細胞分裂機構について、分裂面の位置決定に関する変異体(cdaAl)の遺伝子産物を同定・精製し、その機能を知らべるため分裂に伴う局在等を調査した。この産物の局在に【Ca^(2+)】が関与するか否かを検討中である。(4)細胞分裂はアクチンが主要な役割を果すことが知られており、夛くの【Ca^(2+)】依存性アクチン調節蛋白質の関与も示唆されている。我々は長期に渡りアクチンの存否が議論されていたテトラヒメナで、遺伝子の面からアクチンの同定に始めて成功した。このアクチンは既知のアクチンと比較して大変特有なものであることが判った。今後、このアクチンの【Ca^(2+)】依存性の調節蛋白質についても検討・調査を行いたい。
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