研究概要 |
コレラ毒素CTは腸管膜のGTP結合蛋白のasサブユニットをADP-リボシル化し、アデニレートシクラーゼを活性型に保ち、細胞内cycl.cAMPを増加させる。一方、毒素尿性大腸菌耐熱性エンテロトキシンSTはcyclicAMP量には全く影響せずに腸管膜グアニレートシクラーゼを活性化して、cyclicGMP量を増加させる。しかし、このような作用をもつCTとSTによって起こる腸管内液体貯留液は全く同じ組成からなることから共通の代射過程が示唆される。STの下痢活性が、いかなる代射過程を経て発現するかをプロティンキナーゼ阻害剤であるisoguirdine sultonamide H-7,H-8,H-9を用いてプロティンキナーゼの関与を中心にしらべた。その結果、cyclicGMP依存プロティンキナーゼおよびcyclicAMP依存性プロティンキナーゼに高い親和性をもつH-8,H-9によってSTの下痢原性は完全に抑制されることがわかった。さらに、腸管細胞由来のcyclicGMP依存プロティンキナーゼの3種の基質蛋白のうちひとつ(81K-蛋白)は、CT添加によるcyclicAMP量の増加によって活性化されたcyclicAMP依存プロティンキナーゼの基質にもなり、こうしたcyclicGMP依存あるいはcyclicAMP依存プロティンキナーゼの81K-蛋白のリン酸化反応はH-8,H-9で完全に阻害された。以上の結果からSTおよびCTによる下痢原性の発現には、81K-蛋白という共通の蛋白の関与が強く示唆された。 81K-蛋白は等電点pI=8.1の塩基性蛋白であり、赤血球膜に分布して細胞骨格の調節を【Ca^(2+)】-Calmodulinに依存して行う4.1a蛋白と、二次元電気泳動における挙動を同じにした。このことは、STおよびCTの下痢原性がカルモデュリン阻害剤クロルプロマジンによって消失する結果とも一致し、この点をさらに究明している。
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