心筋細胞内Caと収縮との定量的関係を明らかにする目的で、心筋細胞内にエクオリンを圧注入し、細胞内Caと張力を同時に記録した。心筋は多細胞標本であるので乳頭筋や肉柱を用いる時には多くの表層細胞内にエクオリンを注入しなくてはならない。50-100個の表層細胞内にエクオリンを注入し、張力と同時にエクオリンの光信号を記録した後、正常タイロード氏液中でいろいろな頻度で刺激を行うと光信号と張力は並行して変化する。しかし、高Ca溶液中で刺激頻度を増したり、Na欠除液に入れると光信号に振動性変化が出現し、それに伴ない微小な張力変化が出現する。高濃度カテュールアミンが作用した時にも、弛緩期に自発的な光信号の増減が出現する。このような光信号の振動性変化は、筋小胞体からのCa遊離を抑制するリアノジンにより抑制をうけるので筋小胞体からのCa遊離がこの自発性細胞内Ca濃度変化に関係しているものと考えられた。このような細胞内Ca濃度変化の不均一性があると、細胞内Caと張力との関係を求めることは極めて困難である。そこで、我々は、1-5μΜのリアノジン存在下で心筋に強縮をおこさせ、その時の細胞内Ca濃度と収縮張力の関係を求めた。収縮張力は細胞内Caが約0.5μΜで最大に達っし、従来、スキンドファイバーで得られたpCa-張力関係よりも急峻であった。この方法を用いて、イソプロテレノールの効果と検討すると、イソプロテレノールは細胞内Ca濃度-張力関係を右方移動させた。イソプロテレノール存在下ではアセチルコリンが著明にこの関係を左方に移動した。イソプロテレノールが存在しないと、アセチルコリンの効果は顕著でなかった。心筋細胞内にCaが過負荷になった時には3-4HZの光信号の振動性変化が認められる。この細胞内Caの振動性変化の空間的分布を調べるために、エクオリンの光信号の画像性を行なうことを計画している。
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