研究概要 |
これまでの研究からT細胞の活性化・増殖反応にはカルシウムイオンの動員が必要であることが示されている。しかしながら、T細胞の活性化は少なくとも3つの素過程すなわち1)IL2の生産,2)IL2レセプターの発現,そして3)IL2とIL2レセプターの結合、の3つから成り、そのどの過程にカルシウムイオンが関与するかは必ずしも明らかではなかった。 6-1およびKo.6はそれぞれ(KLH+I-【A^D】)および(OVA+I-【A^K】)特異的マウスヘルパ-T細胞クローンである。これらの細胞は抗原非存在下に培養することにより、IL2レセプターの数が減少しIL2に反応できない静止期へ移行する。その後抗原刺激を与えると6-1はIL2レセプターを発現し、IL2を添加することにより増殖する。一方Ko.6は抗原刺激によりIL2レセプターの発現に加えてIL2生産も行なうためにオートクリン機構により自ら生産したIL2により増殖する。 これらの静止期のT細胞クローンに種々の刺激を与えてIL2生産とIL2レセプターの発現におけるカルシウムイオンの役割を検討した。その結果、Ko.6にカルシウムイオノフォアA23187やフォルボールエステルTPAを単独で与えてもIL2生産は見られないが、両者を同時に与えると高いIL2生産が見られた。一方、6-1にTPAを単独で与えてもIL2レセプターの発現は誘導されなかったが、A23187と共に与えると顕著な発現が見られ、IL2存在下に細胞は増殖した。IL2レセプターの発現はA23187単独でも有意に起こったが、この場合にはIL2存在下でもDNA合成は誘導されなかった。 これらの事実からIL2生産および機能的なIL2レセプターの発現にはカルシウムイオンの動員と共におそらくタンパク質キナーゼ-Cの活性化が必要であることが強く示唆された。
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