研究概要 |
12時間明-12時間暗の照明条件下で飼育したラットについて以下の実験成績を得た。1.CCK-8の摂食に対する効果。(1)背部皮下に植込んだ浸透圧ミニポンプを介して側脳室にCCK-8を連続的に投与すると、暗期の摂食量のみ著しく減じた。この事実はわれわれの過去の実験成績に照すと、CCKが視床下部腹内側核(VMH)に作用していることを示す。(2)そこで、これを確かめるため、遠山らによって見出されたVMHに投射するCCK様物質含有ニューロンの細胞体の存在する中脳背側脚傍核(PBD)を破壊したところ、予想通り過食と肥満を誘発した。2.PBDの電気刺激による高血糖誘発機構。(1)PBDの電気刺激による摂食抑制効果を検討中、この刺激が高血糖を誘発し、しかも、明期の方が高い明暗依存性を示すことが見出された。血中インスリン,グルカゴン濃度を測定すると、PBDの刺激により、前者は低下し後者が上昇するが、これらの変化も明期に大きい明暗の依存性を示した。(2)PBDの刺激による高血糖はβ-アドレナリン作動性受容体の阻害剤であるプロプラノロールによって完全に阻止された。また副腎摘出によって完全に抑制された。しかし、同じ副腎を介する2-デオキシグルコースの脳内投与による高血糖がアドレナリン分秘に依存するのに対し、PBD刺激による高血糖はアドレナリン+糖質コルチコイドの共同作用の結果であることが判明した。(3)PBD刺激による高血糖が明暗依存性を示すため、概日時計の存在する視床下部視交差上核(SCN)を破壊したところ、高血糖応答の消失が観察された。「考察」 以上の結果は血糖の中枢性調節の最高部位がSCMに存在することを支持すると共に、SCN→VMHと、SCN→PBD→(CCK)→VMHの2つの経路で血糖調節情報が末梢へ送られることを示す。最近、電気生理学的にもこの結論を支持する実験結果を得ているが、今後更に詳細に機構解析をすすめる予定である。
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