我々が、すでに開発した光ファイバ型レーザ・ドプラ血流速計(LDV)の光ファイバセンサをカテーテル内に組み込み、冠血流モニタリングシステムとして開発することを試みた。まず、光ファイバを血管内中心に保持するため、カテーテル先端部に8本のスパイクホルダおよびバルーンを付けたものの2種類のファイバカテーテルを作成した。それらを用いて、透明ナイロンチューブ流路内での光ファイバの保持状態を観察した。その結果、直管部、弯曲部いずれも、管中央部に保持できた。また、この際、チューブ内の流速を計測し、同時に電磁流量計で流量の計測を行ったが、両者の関係は、直管部、弯曲部において良好な直線関係を示した(r=0.982〜0.999)。 次に、雑種成犬を用いて、カテーテルを右頸静脈から冠静脈洞を経て、大心静脈(GCV)中心に保持し、その血流波形を連続的にモニタした。その結果、大心静脈血流速度波形は収縮期に上昇を始め、収縮後期に最高流速に達する。その後、拡張期まで緩徐に減少する波形が連続的かつ安定に観察された。この結果は、従来電磁流量計などで計測された収縮期優位の波形と同様のパターンであり、我々の血管直接刺入法によるレーザ・ドプラ血流計測法とも、ほぼ合致していた。また、心筋へのin flowである冠動脈(LAD)を一時的に遮断し、その後急速解放した際のGCV血流(out flow)を計測した。GCV血流は、LAD血流の遮断と共に速やかに減少した。その後LADの解放と共に急速なout flowの増加が認められた。これらの結果は、冠予備能や心筋収縮機能などの評価を行う上で本法の有効性が窺われた。
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