研究概要 |
カチオンミセル上での光増感脱ブロム化 〔序〕亜鉛テトラナトリウムテトラ(p-スルホナトフェニル)ポルフィリン(ZnTPPS)は、セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)カチオンミセルに強く静電吸着される。この吸着ZnTPPSを光増感剤として、カチオンミセルと相互作用し得る1,2-ジブロモ桂皮酸(1)の一電子還元型光脱ブロム化について検討した。本研究では、静電的に反発し合う増感剤と基質間の電子移動をミセル界面の介在により向上させることを目的とする。 〔結果と考察〕1,2-ジブロム桂皮酸(phCHBrCHBr【CO_2】R:1a、R=H;1b、R=Na)はトリエタノールアミン(TEOA)共存下、ZnTPPS光増感脱ブロム化を受けて桂皮酸(PhCH=CH【CO_2】R)を与える。この場合、反応系にカチオンミセルを添加することにより反応効率は10倍以上増加した。pHを上げて1aを1bにすると、10倍以上の高効率となることがわかった。1aの疎水性、1bの親水性から見てミセル系でのZnTPPSと1aの電子移動は、ミセル表面から内部へ(S→I系)起こり、ZnTPPSと1bではミセル表面上(S→S系)で起こる。これらの系の反応性は均一バルク(O→O系)と比較すると、S→S系>>O→O系〜S→I系の順に低下するといえる。同一のミセル系でもS→S系はS→I系に比べて高い反応活性の場を与えることは興味深い。反応量子収率はTEOAの濃度に依存し、高濃度(40mM)では6を越え連鎖的光還元である。この連鎖による収率の向上は、O→O系,S→I系では顕著でなく、ミセル表面上に基質が吸着された場合(S→S系)に連鎖反応が起こり易くなったものであろう。 脱ブロム化の効率は、ZnTPPSと基質との光増感電子移動と後続する脱ブロム化の両因子により支配され得る。このうち光増感電子移動効率は上記三種の系で大きな差異はなく、後続反応の効率が反応系によって大きく異なることが明らかとなった。
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