研究概要 |
61年度には、1.n型シリコン表面全面に傷が存在し、その深さが異なる場合にシリコンの光触媒活性がどのように変化するかという問題、ならびに、2.n型シリコン表面上に光触媒反応により光照射部位にポリマーを析出させるという光パターン形成の可能性を調べた。1.n型シリコン表面を500番エメリー紙でこすって全面傷をつけ、これを硝酸と弗化水素酸の混合水溶液中で時間を変えて傷の深さが異なるシリコン表面を調製した。そしてこれを過塩素酸銀水溶液に浸漬して光照射を行い、銀の析出を伴う不動態化反応を行なわせた。シリコン表面全面を光照射したときと半分のみを光照射したときの光触媒活性を調べたところ、傷が存在しない鏡面ならびに500番エメリー紙でこすった傷面では、いずれも光触媒活性が乏しいことが分った。傷面をエッチングした場合の光触媒活性は、表面全面を照射するか否かで異なり、全面を照射する場合には傷の存在は必要ではあるが少ないほど活性が高く、いっぽう、表面の半分を照射したときには、傷面を少しエッチングし、かなりの傷を残した表面がもっとも大きな活性を示すことを見出した。そして、このようなことが見られる理由について、電気化学測定などによって検討を加えた。2.n型シリコンウエハーの片面を鏡面とし、他面を傷面として、これを過塩素酸銀とピロールを溶かしたアセトニトリル溶液に浸漬し、鏡面上にレーザ光を走査させた。レーザ光を走査させた部位にポリピロールが析出し、傷面には分散して銀が析出する反応が起こり、ポリピロールの光パターン形成は原理的に可能であることが分った。しかし、光照射を続けているとポリピロールが成長し、光パターンの解像度が低下することが見出された。そこで、この原因について検討した結果、光照射強度、析出ポリマーの導電率,光触媒反応が起こる電位などが関係していることが判明した。
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