研究概要 |
本年度は標題研究の基礎となるプロピオン酸由来部構造およびその立体異性体の効率的で一般的合成の方法論の開発を、5.7-ジメチル-6.8-トリデカンジオール(1)をモデル化合物として選んで検討した。成果の概要を以下に述べる。 β位に不斉炭素をもつシス-ホモアリルアルコール(2,3)のエポキシ化により4連続不斉中心を立体選択的に導入することを計画した。このために必要な2および3は、先に筆者らの開発したZrを用いる〔2,3〕Wittig転位により得られる4,5-シス-ヒドロキシエステル(4)より容易に導かれた。 2および3を既知の【V^(5+)】-TBHP法でエポキシ化するとβ位のメチルとシンの立体配置をもつエポキシドが選択的に得られた。一方2および3の水酸基をトリイソプロピルシリル(TIS)基で保護した後【WO_5】HMPAでエポキシ化を行うと逆のアンチ体(7,8)が選択的に得られることを見出した。これによりバナジウムを用いる方法と併せてオレフィン上での有効な立体制御を行うことができた。 残された位置選択的開環によるエポキシド(5-8)の1への変換は、高次の銅錯体を用いることにより行うことができた。転位生成物の副生など未だ改善すべき点がありなお検討中であるが、1のすべての立体異性体の立体選択的合成を達成することができた。
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