研究概要 |
「有機ケイ素および典型有機金属化合物から発生するラジカルイオン種の物性と反応性」,および「有機ケイ素および典型有機金属化合物から発生するラジカルイオン種の合成化学的利用と機能開発」の2課題を中心に研究を進め、以下の成果を得た。 1.アリルトリメチルシラン[1]またはベンジルトリメチルシランと1,4-ジシアノベンゼン(DCB)との光反応において、DCBのCN基の一方がアリル基またはベンジル基によって置換された生成物を高選択的に得た。2.[1]と1,4-ジシアノナフタレン(DCN)との光反応では、DCNの1位のCN基がアリル基によって置換された生成物,DCNの1,2位にアリル基と水素が付加した生成物,およびこの付加生成物が分子内でさらにシクロ付加した生成物を得た。これらの生成物は反応条件の選定によりそれぞれ高選択的に得られた。3.[1]と9,10-ジシアノアントラセン(DCA)との光反応では、DCAの9,10位にアリル基と水素が付加した化合物を高選択的に得た。4.[1]と1-アリール-2,2-ジシアノエテン[2]との光反応では、アリル基が[2]のCN基のβ位に付加した生成物を高選択的に得た。5.[1]とシクロヘキシリデンマロノニトリル[3]との光反応では、アリル基が[3]のCN基のα位に付加した生成物を得た。6.ヨウ化アルキル存在下でのアリルトリブチルスズと[2]との光反応では、[2]のα位にアリル基,β位にアルキル基が付加した生成物を高選択的に得た。7.1-5の光反応では、有機ケイ素化合物から光励起されたシアノ化合物への電子移動によって発生するラジカルイオン種が活性種となって反応が進行することが明らかになった。8.以上の光反応について、反応活性種の化学的特性,反応選択性を支配する因子,合成化学的利用などに関する多数の新知見を得た。
|