研究概要 |
(石津 向井) 安定常磁性中心であるヒーブチルニトロオキシドでスピン標識したクラウンエーテル型のイオンキャリヤーを合成し、Na,K-錯体の液膜輸送について研究した。特にP-位にO【CH_5】基を有するメタシクロファン型クラウンエーテルのスピンラベル体はKイオンを選択的に輸送し、NOラジカル中心のESR強度より二層系の分配定数を精密に評価することが出来た。 (石津 田嶋) 脂質二重膜にドープレE環状ポリアミンによる銅(【II】)イオンの取り込みの動的挙動について研究した。ラウリル基で置換した四座配位の環状ポリアミンをリポソームの脂質層にドープした系に外部より銅(【II】)-トリス錯体,テトラグリシン錯体を加へ、外層の錯体と脂質層の環状配位子との間の銅(【II】)イオンの交換反応をESRの線型及び強度の時間変化により研究した。 チトラグリシン銅(【II】)錯体の場合には【K_1】=2×【10^(-3)】【S^(-1)】の早い取り込みと5×【10^(-4)】,1×【10^(-4)】【S^(-1)】の比較的遅い速度定数の3つのプロセスでは銅(【II】)イオンの取り込みが行われることが明らかとなった。 最初の速度定数の大きい方の取り込みはリポソーム界面にある配位子による銅(【II】)イオンの交換であり、後者は脂質層内部における銅(【II】)の交換によるものと結論された。 グリシルグリシン,トリグリシンについても同様な傾向が見られたが取り込みの速度はテトラグリシンが最も大きいことが明らかとなった。現在テトラグリシン錯体の脂質内輸送のメカニズムについて検討中である。
|