1.目的 バイオセンサの中でも免疫センサは抗体分子のすぐれた分子識別機能を利用して複雑な有機物質を検出定量することのできるセンサであるが、その高感度化に関する研究はあまりおこなわれていない。本研究では特定抗体に対し均一な結合能を有するモノクロナール抗体を化学増幅機能を有する酵素で標識した複合体を分子識別機能物質として用いることにより、高感度に抗原物質を検出定量するバイオセンサを設計作成することとした。 2.方法および成果 最近食物中に見出され大きな問題となっている毒素の1種であるオクラトキシンA(OTA)を測定対象とした。抗体産生ハイブリドーマを用いてマウス腹水より生成した抗OTAモノクロナール抗体に化学増幅機能の大きな酵素カタラーゼを化学結合させ、OTA識別分子とした。OTAを結合した高分子膜を酸素電極に装着しOTA微量計測用センサとした。このセンサ部をカタラーゼ標識抗OTA抗体溶液に浸漬し、免疫結合反応を行わせ、洗浄後膜抗原に結合したカタラーゼ標識抗体の酵素活性を酸素電極により電流計測し、微量なOTAと抗OTA抗体との結合反応を検出できることを示し、OTAセンサの基本応答特性を明らかにした。ついでセンサ部を測定対象OTA溶液に浸漬し、カタラーゼ標識モノクロナール抗体を添加して膜結合OTAと溶液中のOTAへの競争結合反応を行わせ、洗浄後センサ出力を測定することによって測定溶液中のOTAを検出定量できることを示した。微量な抗原-抗体反応がカタラーゼの反応によって増幅され、大きな電流出力として計測され、【10^(-8)】〜【10^(-6)】g・【mL^(-1)】の範囲のOTAを検出定量できた。 3.今後の展開 酵素の増幅機能を利用して高感度に抗原物質を検出定量する免疫センサの設計指針が得られたが、さらに分子識別反応を高感度に計測する方法として化学発光など光学的検出法の利用が有効であり、オプティカルバイオセンサの開発が期待できる。
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