本年度は、先に提出した実施計画に従い以下の実績をあげた。 1.ニワトリの神経管に由来し、TPAの存在に依存して増殖が可能となった色素細胞を安定して培養する条件を決定した。細胞内のcAMPを高める試薬(たとえば、コレラトキシン)等には、さらに増殖能を高める働きがあったが、TPAを培地中から取ると、増殖は完全に阻害された。 2.1で得た色素細胞にニワトリを宿主とするレトロウィルスの感染を行なう為の至適条件を決定中である。現在までの所RSVのSRAstrain.SRBstrainの感染が可能となった。1の色素細胞の純化に、1ケ月以上の期間をとると感染効率が著しく低下するので、1の培養純化法を短期間でおこなうよう系を改良中である。RSV感染色素細胞は、TPAの存在に非依存的に増殖可能となっていて、v-src遺伝子の発現が、TPAによるprotein kinase Cの刺激に置きかえられる事が明確となった。 3.RSVのプロウィルス構造中のv-srcの領域を、FBJ-MSVゲノム中のV-fos領域、または、マウス染色体中のC-fos領域にin vitroのDNA組換えにより置きかえた。このDNAをトランスフェクション法でCEFに導入した。回収したレトロウィルスベクターは、共にCEF中で、v-fosまたはc-fosを高レベルで発現し、細胞をトランスフォームする活性を有した。現在このウィルスの性質の詳細を検討中である。
|