われわれはツメガエル受精卵にまずバクテリオファージλのDNAを注入してそれによって核様体が形成されることを明らかにした。これは卵割期においては分割され娘細胞に伝達された。ただし、それが染色体構造をとって分裂してゆく所見は未だ得られてはいない。この核様体は正常にみえる核孔複合体を含んでおり、またその中心に注入したλDNAを含んでいることは注入するλDNAをトリチウムでラベルし、オートラジオグラフィーをおこなうことによって確かめた。また、電顕観察によって、つくられた核様体の詳細な特徴を報告した。ひとつ興味あることはこのような人工的産物としての核様体は細胞質にしかないはずの油滴をも含むことが見出された。これとは別にツメガエルのrDNAを含むクローンp×lr101Aを注入した受精卵では、この胚が2週間めのオタマジャクシにまで発生した段階でDNA分析に付したところ、注入したp×lr101AのDNA配列が組み込まれていることを見出した。 なお、上記の発表すみの研究の外に、バクテリアのクロラムフェニコールトランスフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドをツメガエル受精卵に注入する実験もおこなった。ここではSV40のプロモーターを含むPSV2CATがもっとも強く発現され、プロモーターを含まないPSV0CATは受精卵では全く発現しないことがわかった。またPSV2CATの発現の時期は胞胚期であることが明らかとなった。この時期は発生において核の遺伝子がはじめて発現してくる時期であるといわれているMBT(midblastula transition)にあたる。ところが、PSV2CATとPSV0CATを卵母細胞に注入したところ、このいずれもが強く発現された。このことは卵母細胞ではプロモーターは不要であることを意味している。おそらくこのことは卵の中にはRNAポリメラーゼが通常の数万倍も蓄積されていることと関係があると思われ、今後大変期待される結果といえる。
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