研究概要 |
カルモデュリン(CaM)のNMRスペクトルについては既にかなり解析されてきたので、小ペプチド、マストパラン(MP)の結合の詳細を調べた。【Ca^(2+)】存在下でCaMにMPを加えると、N,C両ドメインの疎水性アミノ酸残基のピークが変化した。MPが存在するとNドメイン及びCドメインのみの2つのフラグメントのアミドプロトン領域のスペクトルの和がCaMそのものと全く異なることがわかった。従って、MPがCaMのリンカ一部分及び両ドメインの疎水性部分と結合することがわかった。複合体と遊離体との交換速度は【50_S^-1】より遅い。MP存在下で【Ca^(2+)】滴定を行うと、His-107が3段階で変化することを見いだした。MPは【Ca^(2+)】がCドメインに結合することによってCドメインに結合し、更にNドメインに【Ca^(2+)】が結合することによってNドメインにも結合し、それと同時にCドメインのコンホメーションも変えると考えられる。 トロポニンC(TnC)についてはそのNMRスペクトルの解析が遅れているのでそれに力を注いだ。TnCは会合しやすいのでそれを避けるためにジチオスレイトールを加えて測定すると良い結果が得られた。2つの存在するTyrを帰属した。その結果、N-ドメインにあるTyr-10はC-ドメインに【Ca^(2+)】が結合することによっても変化しTncではドメイン間の相互作用が認められた。また、COSY,NOESY,リレードCOSY等の2次元NMRを用いてアミドプロトン及びαプロトンのシーケンシャルアサインメントを試みた。現在のところ、C-ドメインのカルシウム結合部分のGlyを含むいくつかの残基を帰属した。C-ドメインのカルシウム結合部分はNMRで見てもCaMに似ていることがわかった。
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