線虫染色体DNAのラムダファージライブラリーを、クロニンしたトロポミオシン遺伝子断片をプローブとしてスクリーンした。ニケの陽性株が得られ、挿入断片の解析を行っている。一方、併行して行っている線虫パラミオシン遺伝子の塩基配列決定実験で、これまでイギリスMRC分子生物学研究所で行ってきた実験方法の設定を行った。まず目的とするDNA断片をハイブリッドラムダファージから制限酵素を使って切り出し、アガローズ電気泳動で分画、抽出する。リガーゼで環状にした後、超音波処理をして300-500bpの断片を集め、クレノー酵素で末端を修復してM13ファージに挿入、常法どうり単鎖DNAを調製する。この方法だと両鎖のランダムな断片が得られるので、特殊な制限酵素を使用しなくても全長の正確な塩基配列決定が行える。得られた塩基配列は、パソコンによる自動連結ソフトを用いれば短時間で決定できる。多数のクローンを処理するので放射性同位元素は少し多量に使わねばならない。実験条件の設定に少し時間を要したので、今後目的のトロポミオシン断片を単離・精製して一気に塩基配列決定を行う予定である。蛋白質レベルの実験では、他の生物に比べて少し大きい分子量を持っていることを確かめた、特異的抗トロポミオシンと反応するものはSDSPAGEで一本しか認められなかった。今後クローン化し、塩基配列決定を行った結果をもとに線虫の運動異常と筋肉形態形成との関係を研究していく予定である。
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