炎症の病態モデルとして我々が開発した各種のラットの空気嚢型炎症モデルは、炎症反応誘発後、数日で増殖性の袋状の新生肉芽嚢組織が形成され、組織液に対応する嚢内液が多量に採取できるため、血管の増殖や増殖抑制、血流調節に関与する生理活性物質の検索が可能である。 1.増殖型炎症組織中の血管新生の組織学的観察方法の検討 カラゲニンを起炎剤とした空気嚢炎症惹起7日後に、ラットにX線造影剤を注入し新生肉芽嚢組織の軟X線写真を撮影すると、この組織は微細血管の新生が極めて旺盛であることが認められた。このような微細血管の新生を抗ヒト第【VIII】因子抗体を用いた第二抗体法による蛍光抗体法で、組織学的に観察する方法を検討した結果、用いた抗体はラット第【VIII】因子に交叉反応し、また、ヒト臍帯を用いて凍結切片法によらなくてもパラフィン包埋法で第【VIII】因子の抗原性を失わずに組織標本の作成が可能で、内皮細胞を同定できる方法を確立した。以上の結果から、新生肉芽嚢組織を抗ヒト第【VIII】因子抗体を用いた蛍光抗体法で観察すると、比較的大きな血管では十分に内皮細胞が同定できることが明らかとなった。現在、ラット正常組織を用いた毛細血管の同定と、肉芽嚢組織中の新生毛細血管の同定を検討中である。 2.局所での血流調節因子に関する検討51Cr標識ラット赤血球をトレーサーとしてカラゲニン空気嚢炎症誘発8日後のラットに静注し、肉芽嚢組織内の血流量を測定したところ、プロスタグランジン(PG)E1は局所血流量を用量依存的に増加させるが、PGE2については有意な増加は認められなかった。また、蛍光標識したBSAをトレーサーとして血管透過性亢進を測定しても同様の結果が得られ、このような結果は、増殖期の組織は局所での血流調節因子と考えられているPGE2に対しては反応性が低いことを示すものと思われる。
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