研究概要 |
我々はこれ迄にラット(Spnague-Dawley)の脳cDNAライブラリーより2種のカルモジュリンcDNA(pRCM1&pRCM3)をクローン化し塩基配列決定によりそれらは2種のカルモジュリン遺伝子より転写された事を示してきた。またSHRのゲノムライブラリーを作成して、そこから2種のbona fideカルモジュリン遺伝子(CaMI&CaM【II】)およびその各々に由来する偽遺伝子(λSC9&λSC8)をクローン化し、構造を解析してきた(CaM【II】は現在解析中である)。CaMIは6つのエクソンより成る。イントロンは3ケ所で【Ca^(2+)】結合ドメインを分断する位置にある。カルモジュリンは【Ca^(2+)】結合領域を中心として4つのアミノ酸配列の相同な部分に分けられ、イントロンの位置もその境界に存在すると期待されたが、得られた結果は意外であった。当初ラットとニワトリのイントロンの数と位置は大巾に異なると思われたが、最近ニワトリのカルモジュリン遺伝子の塩基配列に間違いが見出され、大巾に改訂された結果、両者は遺伝子構造上酷似している事が分った。第【III】イントロン上にidentifier seguenceに類似の塩基配列が見出されたが、そのCaMI転写における役割は未知である。CaMIの5′上流には3つのGCboxが見出されるが、この近辺でニワトリのカルモジュリンと強い塩基配列相同性があるのでこの領域はカルモジュリンの転写に重要であると思われる。 λSC9は分子内に2ケ所フレームシフト変異をもつ、機能を持つカルモジュリンmRNAを転写できない偽遺伝子である。λSC8もCaM【II】の偽遺伝子であるが、構造上転写している可能性がある。SHRのλSC8では興味ある事に第3【Ca^(2+)】結合領域内にAsn-97,Gly-98なる2つのアミノ酸欠損が見出された。この欠損はニワトリでは見られない。これがSHRの高血圧発症に関わっているかどうか、WKYのλSC8遺伝子の構造決定も含めて現在検討中である。
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