研究課題
1.鉄鋼業・造船業は代表的な衰退産業であるが、この分野における経営戦略の特徴は、企業体の存続を図りつつ、その事業内容を転換させていく多角化努力にあった。そこで、問題は、第一に、政府としてこの多角化努力をいかに支援すべきかを明らかにするところにある。だが、鉄鋼業・造船業が我が国にとって戦略的重要性を有する産業であり、この点からすれば、転換を無制限に認めるべきではなく、適正量の生産は今後とも維持すべきだということになろう。それには国有化を含む助成策を考慮することが必要である。そこで、問題は、第二に、こうした助成策を正当化する政策理論は何かということになる。ここから、広義のセキュリティないし公益性の原則を検討することが今後の課題になるとの知見がえられた。2.コンピューター産業・電気通信産業は代表的な成長産業であるが、ここでは参入規制、信用供与から研究開発の奨励に至るまで、多様な助成措置が講じられていることが明らかにされた。これらの措置の当否が国際的にも問われている今日、その再点検は不可避であるが、この場合にも、助成措置を正当化し、同時にその限界を画定する政策理論としては、公益性原則を措いて他に考えられない。同じことは金融行政についても指摘しうる。金融行政はとくに自由化圧力のもとで政策枠組の再編成を迫られているが、そのさい基準となるものは公益性原則である。こうして、政府・産業関係の全体を通じ、公益性原則を理論的に精緻化し、同時に手段体系として操作化することの必要性が明らかにされた。3.なお、本年度の研究を通じ、今後産業政策を展開していくうえで地価問題が重大なネックとなる可能性があることが明らかになったので、来年度以降、土地問題を検討項目に加えることにした。
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