研究概要 |
インド古代の宗教者は婆羅門(brahmana)と沙門(sramana)のどちらかに属する. この中で, 婆羅門については, すでに明らかにされているものの, 沙門の発生と思想内容の全貌が明確に把握されてはいない. その理由として, 文献上, 仏教とジャイナ教の二宗教に限定されており, しかも仏教のみが詳しく研究されてきたのに対し, ジャイナ教はまだ総合的研究が行われてこなかったことによる. 本研究がインド研究の主流になりえなかったこととも関連している. 従って, インド思想の全貌を解明するためには, 沙門思想の研究は不可欠のものであるといわなければならない. ここに沙門思想を総合的に把握し, かつ, その基本的構造を明確に分析し, 発展形態を解明して, 本質論を明らかにしようとすることにある. そのために共同研究によって総合的に究明しようとするものであり, 本年度は, 基礎的調査として, 内外の研究文献を収集し, そのリストを作成して, 共同討議の資料とし, いままで, 研究が稀薄であったジャイナ教の成立と思想の発展形態を中心課題として共同研究するための会合を持った. 特にジャイナ聖典の言語の特色, ジャイナ教の思想の系譜について, 各分担者の研究に関する発表があった. 本年度はグループ研究として, 沙門の発生基盤とその背景を追求し,文化史的考察により, 沙門の形態と多様化を分析, さらに, 仏教とジャイナ教との比較研究をすることによって, 共通点と相違点とを浮彫りにし, 沙門思想の特色を検討し, それについての発表があった. またひき続き, 美術史上の特色を提示, さらに, インド思想史上の他思想による批判の中から, 沙門の特質を検討し, その解明に努めている. また, これらの成果をふまえ, その成果を原稿化し, 公刊できるよう, 文部省研究成果刊行費申請の準備もする予定である.
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