西洋思想における正義論の系譜とその現代的展開

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61301006
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 亀井 裕 東北大, 文学部, その他 (20004020)
• 研究分担者: 川本 隆史 跡見女子大学, 文学部, 助教授 (40137758) ; 青井 秀夫 東北大学, 法学部, 教授 (70004158) ; 柏原 啓一 東北大学, 文学部, 教授 (30008635) ; 岩田 靖夫 東北大学, 文学部, 教授 (30000574) ; 上妻 精 東北大学, 文学部, 教授 (10054298)
• キーワード: 公正 / 基本的人権 / 平等 / 社会福祉 / 社会契約 / 格差原理 / 利益配分 / 元徳

研究概要

1.研究活動報告。全体的な活動としては、昭和61年7月1日、第1回会合をもち、研究代表者より研究の趣旨説明のあったあと、各自の研究予定の発表と研究分担の画定、今後の研究会の運営について話し合った。8月19日・20日研究合宿を行い、藤本隆志氏の正義概念の言語上の論理的な身分と社会的正義の両面性に関する発表、川本隆史氏のアメリカ哲学界の動向を中心とした正義論の現在と展望に関する報告を中心に、討論を行った。11月21日、森際康友氏(名古屋大学法学部助教授)を講師にお招きしてイギリス・オックスフォード大学を中心とした正義論の動向についての報告をもとに、研究討論を行った。昭和62年2月22日、神崎繁氏(東北大学教育学部)および大庭健氏(専修大学文学部)を講師に迎えて、神崎氏の発表「Ars Viveudi-その変容と変形」、大庭氏の発表「コンセンサスとコヒアランス」を中心に討論を行った。なお、以上の全体的な活動のほか、分科会ごとの研究・個人研究もそれぞれのペースで行われた。
2.研究成果、人文科学的な研究において短期間で新たな知見をもとめることは率直に言って難しい。むしろ本研究では、正義をめぐる多様な問題群をまず確認することが重要であった。すなわち、正義論と人間観との不離の関係、徳としての正義と社会制度の原理としての正義との関係、イデーとしての正義とイデオロギーとしての正義、正義は実体概念か機能概念か、規範原理かメタ原理か、など正義の概念の性質やレヴェルの問題、正義と善との間の基礎付け関係、正義論の限界などの問題がそれである。これらの問題確認によって、諸正義観の対立が浮き彫りにされたことが、来年度の研究に向けての成果と言えよう。

研究成果

• [文献書誌] 岩田靖夫: 思想. 746. 25-42 (1986)
• [文献書誌] 川本隆史: 現代思想. 14巻6号. 155-165 (1986)
• [文献書誌] 川本隆史: 創文. 270. 5-8 (1986)
• [文献書誌] 川本隆史: 現代思想. 15巻3号. 232-243 (1987)
• [文献書誌] 青井秀夫: 広中俊雄教授還暦記念論文集. 307-361 (1986)
• [文献書誌] 柏原啓一: 新・岩波講座・哲学. 13. 41-64 (1986)
• [文献書誌] 伊藤春樹著 丸山高司,小川侃,野家啓一(編): <知>の理論の現在所収. (1987)
• [文献書誌] 野家啓一: 現代思想. 14-11. 156-170 (1986)
• [文献書誌] 近藤功: 哲学(日本哲学会刊). 36. 141-151 (1986)
• [文献書誌] 近藤功: 東北大学教養部紀要. 45. 85-103 (1986)
• [文献書誌] 上妻精著 加藤尚武 編: 『ヘーゲル読本』所収. 48-51 (1987)
• [文献書誌] 藤本隆志: 科学哲学(日本科学哲学会刊). 19. 31-42 (1986)
• [文献書誌] 天野正幸: 思索(東北大学哲学研究会刊). 19. 1-34 (1986)
• [文献書誌] 亀井裕: "倫理的世界" 以文社, 264 (1986)
• [文献書誌] 茂泉昭男: "アウグスティヌス研究-徳・人間・教育-" 教文館, 600 (1987)
• [文献書誌] 野家啓一,他 編著: "〈知〉の理論と現在" 世界思想社, (1987)
• [文献書誌] 野家啓一,他: "哲学の再構築" 南窓社, (1987)