研究分担者 |
五十嵐 嘉晴 金沢美術工芸大学, 助教授 (60046167)
近藤 フヂエ 新潟大学, 教育学部, 助教授 (50018842)
川上 実 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (60046323)
小町谷 朝生 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (60018629)
遠藤 恒雄 愛知県立芸術大学, 美術学部, 教授 (50046322)
|
研究概要 |
芸術は、表現,作品,作品の享受の面から成り立っている。芸術表現の純粋性を保とうとして、作者が伝達を前提としない、あるいは拒否する立場をとったとしても、表現された作品は、作者の意図とは無関係に、メッセージを発信し始める。すなわち、表現と伝達は表裏一体で、不可分のものである。本研究は、芸術の自己完結性と伝達の問題を有機的総合的にとらえ、芸術の特質と文化的・社会的機能の関連を構造的に理解しようとしている。 芸術における伝達は、あくまでも作品によってなされ、伝達の内容は、美的なものが中枢ではあるが、宗教,倫理,思想,教育面などとも関連してくる。すなわち、創る側も享受する側も、作品に注ぎこみ、また作品から感受するものは、時代,・地域によって、実に多様である。例えば本研究では、分坦研究の一つとして、西洋中世の宗教芸術の場合などが具体的に考察されている。 ところで、ある一定の地域、同時代に作られ、享受される作品の場合には、共通の基盤の上に、表現の意図が比較的正確に伝達されると言えよう。しかし芸術における伝達には、時代地域を越えた伝達がある。 伝統の形成,その継承と革新の問題は、芸術の最もオーソドックスで重要なテーマの一つであるが、本研究では、一般的な伝統の伝達、言わば学習や影響の問題とはやや異った、芸術的蓄積からの飛躍的な伝達についても考察しようとしている。例えば、ピカソがニグロ彫刻に啓示を受けるが如き類で、それは任意な摂取にみえるが、当然作者の主体性の問題があると同時に、元来芸術作品には、時代地域を超越して伝達されるべき力が内在しているからだと考えられる。 以上のような、芸術における伝達と時代性の諸側面のそれぞれの考察と、その統合化に本研究は向っている。
|