研究課題/領域番号 |
61301009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平田 寛 九大, 文学部, 教授 (00036980)
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研究分担者 |
岡部 由紀子 銀杏学園短期大学, 専任講師 (70160702)
錦織 亮介 北九州大学, 文学部, 助教授 (80047729)
下村 耕史 九州産業大学, 芸術学部, 助教授 (50069514)
菊竹 淳一 九州大学, 文学部, 助教授 (10000374)
兼重 護 長崎大学, 教育学部, 教授 (40039433)
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キーワード | 工房 / 美学 / 普遍 / 芸術 / 史料 / 美の理想 / 制作 / 歴史 |
研究概要 |
東洋と西洋のいづれにおいても、古代・中世芸術は、工房制作にもとづくという点で共通している。近世および近代の個性主義を重くみる芸術と、制作の基盤をことにする。本研究はそのことに着目し、そのことが美学的にどのように反映しているかを解明することを課題としている。 本年度は、主として、基礎史料の集成につとめたが、その集成に則しても、本課題についての研究のもつ諸側面が顕在化し、方法論の自覚をうながすとともに、思考の深化をもたらしたことを多としたい。以下、雑誌論文6篇をとりあげて、本年度の実績の大要をのべる。 日本の11〜13世紀における絵仏師とよばれる画家たちの百数十例にのぼる史料を集成した「僧綱絵仏師研究史料稿」,「鎌倉時代南部絵仏師研究史料稿」(平田寛)は、工房制作の最も基本的な史料で、日本絵画史研究の基礎史料としてのみならず、11〜13世紀の工房の形成と絵画理念(美学)の相関を考える美学史料として利用できる。「絵仏師応源のこと」(平田寛)は、その史料にもとづき、疎荒という美的評価と、その時代の絵画の変化とを関連して論じた。絵画の歴史的変化は、歴史的美の理念の反映としてとらえることができる。「美と芸術への道」(浜田裕子)は、『ミリエ資料集』にもとづき、ギリシャ古代美術について、制作と美学との関連を、ギリシャ美学の眼であきらかにした。「1504年のデューラー・アダムとイヴ図の周辺」(下村耕史),「アカデメイア派駁論」(岡部由紀子)はそれぞれ、制作と美学の立場での、美的理念の現実化と根據を論じ、中世から近世への、また古代から中世への転換期における、美の普遍について考察を深めた。 研究課題の深さが、解明の多様さをもたらしたのが、昭和61年度の実績における特徴である。
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