研究分担者 |
増田 直衛 慶應義塾大学, 文学部, 専任講師 (60118510)
和氣 洋美 神奈川大学, 外国語学部, 助教授 (80122951)
野口 薫 千葉大学, 教養部, 教授 (00009367)
古崎 愛子 東京女子大学, 短期大学部, 教授 (70086263)
鷲見 成正 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (00051285)
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研究概要 |
本研究は,M.Wertheimer,W.Metzgerらの伝統的ゲシュタルト心理学と,グラーク学派に端を発し,ゲシュタルト心理学の影響を強く受けているF.Metelli,G.Kanizsaらの実験現象学的観点から諸知覚現を捉え,従来の諸法則を吟味すると共に,新しい法則とそれらを包摂する理論の再構築を目標として計画された. 本年度は2回の研究集会を持ち,得られた結果の主要な点のみを列挙する. (1)面の明るさの知覚:面の明るさ知覚は対象の視覚的空間構造により変化し,照明条件により表面色,面色,さらに影の印象を生じる. また,照明方向は対象の現われ方に影響するが,その方向は面の明るさの勾配,陰影によって決まる. (2)輪郭と面の形成:色の拡散効果によって形成される面とその現象的透明感の関係がKanizsa図形を初め種々の図形を用いて検討したが,Metelliによる透明感の予測式が現象の分類及びそのメカニズムを知る指標となり得ることが明らかとなった. また,同心的なディスク・リングからなるランダムドットの回転運動速度差による輪郭の形成が検討され,相対速度差のみに依存せず,静止と運動の組み合わせにおいて輪郭が顕著になることを示した. (3)体制化に果たす運動の役割:連続的運動とストロボ視による断続的運動の下での対象の体制化を比較検討した結果,ストロボ視条件での運動知覚の推移の過程が運動・形態知覚解明に大きく寄与することが明らかとなった. (4)幾何学的錯視に関与する諸要因:本実験では特に部分と全体の関係を問題としたが,従来のゲシュタルト法則に部分的であっても重大な修正をする必要性を認めた. (5)触による形態知覚:特定のパターンを同時または継時的に触る場合,文字においては後者が優れているが,図形ではむしろ前者の識別が良い. この事実は知覚過程と再認過程の体制化の間の相違を示している. (6)脳損傷患者の形態の体制化:色と形を用いて見本図版に従う構成過程を吟味した結果,健常者と脳損傷患者の間の群化の間に有意な差がみられた.
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